これから目指す未経験社会人の方へ [勉強開始]

ここ数年、弁護士や公認会計士の就職難が叫ばれています。弁理士も同様です。特に報道されてないのは、単に話題性がないだけでしょう(法律系の王者・弁護士や会計系の王者・公認会計士と比べれば、ちょっとね)。つまり、合格しさえすれば経済的に安泰、という資格ではもうないということ。

★試験合格で手に職?
企業相手の転職活動のご経験がある方ならご存知だと思いますが、転職の際、重視されるのは年齢に見合った職務経歴だと思います。特に、30歳以上の未経験の採用は(コンサル等を除いて)わずかだと思います。弁理士業界はここまででないとはいえ、合格者数も増え内定という椅子取りゲームの状態です。研究職からの転向など職歴が生かせるケースは別として、合格者だけど未経験者(役に立つかどうかわからない)のすべてを採用できる余裕はもうないように思います。資格取得で一発逆転できる時代は終わったと思います。

事務所での職務は主に明細書作成と中間処理の代理と思います。これは試験内容とは一致しない。雇用する側から見れば、実務ができる人(できそうな人)が欲しいのは、当たり前。だから優先順位が、経験者>未経験でも研究者>それ以外、若者>年配者(若い方は扱いやすく基本給が安い)、理系院卒>理系学卒>文系(特許が主だから)、現職>無職・主婦(現在働いていることも社会的信用のひとつ)、男性>独身女性>既婚子持ち女性(産休や子供の病気での休みを懸念)、そして、無資格経験者>>未経験有資格者(即戦力しかもコスト安) と思います。

★今の仕事を辞めない
弁理士試験は社会人の合格者が多い資格。極端な話、仕事を辞めてまで専念する必要があるとは認識されにくいです。今後長期戦が予想されたとしても、仕事は辞めない方がいいと思います(現在の年齢が30歳を超えている場合は特に)。結果的に知財分野への転職や異動が成功しなくても、少なくとも“食いっぱぐれ”しないので。また、勤めていれば、弁理士試験から撤退して今の仕事を続ける“後戻り”や、知財業界以外への“方向転換”もしやすいと思います。

★受験専念はハイリスク・ローリターン
受験に専念できたほうが、より合格しやすいとは思います。でも退職したからといって、短期で合格するとは限らないし、それ以上に精神的にも仕事的にも逃げ道がなくなり、つらいと思います。最悪(受からなかった)場合は特に、その時点の年齢がある程度(男性35歳以上、女性30歳以上)であれば、その後の就職活動は難航が予想されます。
受験から撤退して、一般企業に就職活動するとして、面接担当者に以下のような質問をされた時、どうされますか? 「○年間も勉強に専念できたにも係らず残念な結果に終わったということは能力に問題があるのですか?」、「受験勉強に耐えるだけの忍耐がないのですか?」、「○歳という年齢にしては社会人としての考えが甘いのでは?」…。一般的に企業の場合、転職市場は職歴のブランクに対して敏感です。これら疑念を凌駕する回答(採用したいと思わせる回答)を返すのは難しい気がします。

★合格は最終目的ではなく、単なるスタート
知財業界で働くことを目的とするなら、試験に合格してからが本当のスタートだと思います。合格後すぐに仕事や人生に活かせる機会が訪れるとは限りません。頑張った分に見合うだけのリターンがなかったとか、資格取得に費やした勉強時間や予備校代がムダだったと感じる結果に終わるかもしれません。だから、合格までではなく合格後のことを考えてキャリアプランを立てた方がよいのかな、と思います。
一時、某予備校でスタッフの大量採用を行っていましたが、文系の方が多いですね(合格者数は理系>文系なのに)。最初から講師や教材作成等を希望して資格を取得したとは思えないので、自身のバックグラウンドと需要とのマッチングは重要と思います。

私自身も実務未経験ですし、多くの人と同じ理由(理系なら研究職に限界を感じた、文系なら他資格に挫折した 等)で受験しています。そして、今のところ知財の仕事はしていません。知人からはもったいないといわれますが、そうなるリスクは織り込み済みでした。資格に対し過度な期待をしないくらいの方がいいのかな、と思います。

 


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pandan

いろんな資格がありますね、
自分に合うのを見つけるのも良さそうですね。
by pandan (2011-02-16 07:33) 

まかろん

pandan様、コメントありがとうございました。

資格取得って、時々マラソンのように感じるときがあります。
走っているときはつらいのですが、
走り終えると「楽しかった、また走りたい」って気になってしまうんですよね。


by まかろん (2011-02-17 02:47) 

なおすずかけ

 おっしゃることもよくわかるのですが、(たとえば私のような凡人にとっては)弁理士試験はそれなりに大変なので、期待してしまうという気持ちも分かります。
 無資格者時代から約5年特許業界で仕事をした感想としては、1.様々な経歴(background)の人を受け入れてくる代わりに、2.その経歴が活かされないと簡単に「退場」させられることです。
 こういう業界(私は今の特許事務所しか経験していないが、このように書いても誇張ではないと思う)で生きて行ける逞しさがある人には、弁理士資格はお勧めでしょうかね。

では。

by なおすずかけ (2011-02-17 23:41) 

まかろん

なおすずかけ様、コメントありがとうございました。

人間誰しも、見返りを期待しちゃうと思います。私も同じです。
些細なことであれば、バレンタインのお返しとか。たとえ義理チョコでも、ホワイトデーに何もないと、ちょっとがっかりします。
資格だと、なおさら期待します。『受かれば自分の未来は明るい』って。そう思えるからこそ、頑張る力が湧いてくるのですが。

なおすずかけ様は高い学位をお持ちですし(少なくとも凡人ではない)、自然科学に造詣の深い方がキャリアチェンジするには、弁理士(特許事務所)は自然な選択だと思います。

でも時々、なぜ『弁理士』なのかが分からない(バックグラウンドが合っていない)方を、お見かけします。一般的に士業は(会社員と比べて)実力が雇用に反映される、厳しい世界だと思うんです。
こういった方が合格後に、経歴が活かされずに簡単に「退場」させられてしまったり、不況で「入場」すらできなかった場合に、すごく裏切られた気持ちになると思うんです。

いや、でも、あんまり悲観的になったら、どの資格も狙えないことになってしまいますね。適度に夢を持ち(期待し)、チャレンジするくらいでないと、だめですよね。そのくらいの逞(たくま)しさがあって、未来を切り開けるのかも。

もうちょっと景気がよくなるとよいのですが・・・
by まかろん (2011-02-18 03:10) 

履歴書の書き方の見本

とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
by 履歴書の書き方の見本 (2011-02-25 21:12) 

まかろん

履歴書の書き方の見本さま>
コメントありがとうございました。履歴書は次ステップ(面接)に進めるかどうかが決まる大切な書類ですよね。弁理士試験は学生さんより社会人の受験生が多いので(特許庁の集計によると1:16くらいでしょうか)、職歴書の書き方見本もご紹介いただけますと嬉しいです。
by まかろん (2011-02-27 10:36) 

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