口述の過去問はやるべき?(後編) [口述試験]

前回(過去問の位置づけ→リンク)のつづきです。

★実際に例題を解いて(答えて)みる
たとえば、いわゆる先使用権だと、以下のような質問が並んでいます。
・制度を設けた理由は?
・要件についてお答えください
・事業の準備とはどの程度のものを指しますか?
  :
ここで「こんなのちょろいわ」って感じた方は、自分の回答と口述で求められるレベルとにズレがある可能性が高いです。なぜなら「だいたいこういうことでしょ」的な回答(自分的な理解)は許されない世界だから。

例えば「特許法79条は何についての規定ですか?」に対し『先使用権』と答えてしまってはNG。条文上「先使用権」という用語は1回も出てこないから。条文の用語『先使用による通常実施権です』(条文見出しにあります)で答えるか、“いわゆる”を付けて『いわゆる先使用権です』と回答する必要があります。
また、「79条はどのような規定ですか?」に対して、よく論文の定義で書く『その
出願の際に善意に…』が回答と思ったとしたら、それでは“不十分”。条文上でてこない「善意」というワードに対して、「“善意に”とはどのような意味でしょうか」という質問が追加される可能性があります。なぜなら「善意に」の内容を正確に理解しているか分かりかねるので、追加の質問をして確かめたいから。特許出願の時点における知不知を問題としているのか、実施している発明の知得の経路を問題としているのか、「善意に」という単語からは分かりかねるからです詳細は青本p.248参照)。

★条文どおり攻撃
過去問を見てみると、条文をほぼそのまま答えさせている箇所がいくつかあります。条文どおりに答えさせることに対して「内容が分かっているならいいじゃないか、何でわざわざ条文暗記させる必要があるんだ」と思う気持ちはわかります。でも、ちゃんと分かっているかを判断するのは、受験生の自分ではなく、試験官なんです。自分が理解しているということが試験官に伝わらなければOKと評価されない。
自分の言葉で説明しようとして、たとえば上記の79条の例で『他人の発明とは独立に…』と答えたとしたら、この『独立に』はOKなのかOUTなのか、試験官によっては迷ってしまうかも。そこで確認するために「では“独立に”とはどのようなことですか?」と枝葉の質問が増え、試験官が納得できなければいつまで経っても次の質問に進めないことにも(口述試験は制限時間内に所定の問題をクリアしないと途中で打ち切り→その科目はOUTとなります。3科目中OUT2つで不合格。おおよそ7~8問/10分ですが、余計な質問が増えると持ち時間をどんどんロスします)。
条文どおり「特許出願に係る発明の内容を知らないで」って答えれば、条文にそう書いてある以上(たとえ内容や趣旨を分かっていなくて丸暗記しただけだったとしても)間違いとはできない。条文どおりや条文のキーワードで答えるって便利なんです。

★口述の練習は1人でできる?
これまで短答、論文で過去問は解いてきたと思います。短答は○×問題だから自分で採点できるし、論文も(本試を突破できるレベルにある方であれば)過去問の参考答案を見ながら自分の答案を採点できると思います。でも、口述も自分でチェックできるよっていうのは間違い。論文の場合、自分で解いた(書いた)過去問の答案を自分で採点できるのは、論文答練で論文力を養ってきたからですよね。口述に対して、口述力を養ってきた経験がないなら(具体的な口述対策をやったことがないなら)、最初は論文と同じく練習の場(講師や近年の合格者に見てもらう場)を持ったほうがいいような気がします。
特に口述の場合、論文以上に誰かに見てもらった方がよいと感じるのは、回答以外の要素も重要だから。論文でも答案の文字がきれいな方が心証がいいように、口述ではその人自体の雰囲気がいい方が心証がいい。身なり、しぐさ、話し方、会話のテンポ…就職や転職活動の面接とポイントが似ていますね。

各受験機関で今年もガイダンスが催されると思います。
<過去のガイダンス等の例>
・G:口述準備講座の説明会:7/15()20:30~、8/4()19:30
・Yゼミ:口述ガイダンス:7/25() 13:00
・L:口述対策「はじめの一歩」:8/1()8/8()16:00
(日付は昨年H22年のものです。今年の予定は各予備校のHPをご確認ください)

論文の結果発表(9月下旬)までの間は口述対策をして過ごされることをオススメします。仮に本試の感触がよくなかったとしても、口述以外にこの時期に勉強することってあんまり思い当たらない。論文対策は発表後でもいいわけだし、それにもし論文試験に受かっていたら…発表から口述本番までの3週間では、時間的にけっこうきついです。
口述の勉強をすると、条文の細かい事項を把握できるし、青本の理解も深まります。それに、いつかは受けなければならない試験。どっちに転んでも、口述対策はムダにはならないと思いますよ。

*参考文献:口述アドヴァンステキスト平成22年版、工業所有権法(産業財産権法)逐条解説第18


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pandan

口述対策はいつでもどこでも出来そうだし、
ムダにはならないと思います。
by pandan (2011-07-12 07:40) 

まかろにーあ

pandan様☆
細切れ時間は侮(あなど)れないですよね。
by まかろにーあ (2011-07-12 23:49) 

pandan

おはようございます。
by pandan (2011-07-15 07:42) 

まかろにーあ

pandanさま☆
こんばんは。3連休ですが、暑いですね。
by まかろにーあ (2011-07-17 01:50) 

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