異動を待つか、転職するか [勉強開始]

おひさしぶりです。今回は昨年2月の記事「これから目指す未経験社会人の方へ」の続編で、「目指してしまった未経験会社員の方へ」です。
受験勉強をしている以上、試験に合格したら将来は知財系のお仕事をしたいと思っている人が大半と思います。現在未経験としたなら、まずはその環境に飛び込んで経験者になる必要がありますよね。

First Choice:異動を待つ
個人的には異動希望がかなうなら、それに越したことはないと考えています。環境が新しくなるのは転職も同じことですが、部署が変わるのと、会社ごと変わるのとでは、大きな違いがあります。社風(その勤務先の「暗黙の了解」的なもの)に馴染むまでには思いのほか労力が必要なもの。また、勤務先のどこかに誰かしら知り合いがいる環境と、一から人脈を築き上げる必要のある環境とでは、心細さの度合いも違うはずです。
最大のメリットは未経験の立場で現在の収入が維持できることです。これは転職では一般的に難しい(もちろん例外もあります。現在の勤務先の給与が著しく低い、付加価値のある人材などでは、転職で年収upが期待できるかも)。

とはいえ、「試験に合格しました、知財部に行きたいです」と上司に直訴(?)して、「はいそうですね」といってすぐに異動させてくれる会社があれば、かなり良心的な会社です。たいがいは、数年後の定期異動で希望が叶えばよいほうで、希望などそもそも叶わない(異動できないとか、他の別の部署に異動になったとかの)ことの方が多いと感じます。

人事権のあるお偉い方々は、自分の部署にとって役に立つ人材であれば欲しいし、そうでなければ(資格があろうが)要らないと考えています。それ以前に、現在の所属部署と知財部にルート(過去の異動事例)がないのであれば、異動自体が難しい。資格取得したのだから異動させてもらえて当然と思っているのなら、かなり甘い。異動は(転職の一般応募(コネでない応募)以上に)人脈の世界。将来の上司である知財部の偉いさんガ自分の存在を(いい意味で)認識してくれていて、なおかつ、現在の上司が異動させてあげようと思ってくれていて、初めて成立するような気がします。

Second Choice:転職する
異動が厳しいという状況なら、転職するしかない。そして、合格者であれば、なるべく早い方がいい。日常業務で知財に触れていない以上、受験勉強を終えた時点から知識は加速度的に抜けていきます。数年待っても結局異動できなくて、それから転職市場に足を踏み入れたとき、自分自身が今よりも好スペックであるケースはあまりないので(特に、年齢が増えた影響を打ち消せるのは、その年齢相応の経験(研究開発経験)がある場合と思います。もしくは英語がすこぶるできるなど)。

転職の場合、一般的に重要視されるのは職務経歴(どの部署で何の仕事をしたのか)だと思います。転職希望者それぞれのバックグラウンドは千差万別。同じ大学の同じ学部を卒業し、同じ会社に入社しても、配属先が異なれば(仮に同じ部署だったとしても)入社後のキャリアパスはさまざまだと思います。転職市場において、自分という商品にいかに魅力的な宣伝文句をつけられるかは、この職務経歴から何を引き出せるかにかかっている。(といっても順調にキャリアを積めていたのなら、わざわざ弁理士試験を受験してまでキャリアチェンジしようとは思わないわけですが…)

そして、よく「転職活動に集中するため」と称して退職される人がいますが、在職中のほうが金銭的にも精神的にも余裕をもって転職活動ができます。辞めてすぐに次の勤め先が決まればいいですが、就活が長引けば長引くほど離職期間は「ブランク」として蓄積され、さらに就活を難航させる要因になります。現在無収入という事実から給与交渉で足元を見られたり、早く収入を得たいがために待遇の悪い所を焦って選んでしまう可能性もあります。

あと、現在別の仕事をされている人が、直接企業の知財部に転職するのは難しいと感じます。同じ未経験者を取るのなら、別の部署にいる自社の社員を異動させても、あまり変わらない。新しく誰かを雇ったら新たに1人分のコストが発生する分、雇う側にとってはデメリットとも言えるかもしれません。

Last Choice:諦める
転職できないケースもあると思います。例えば、家族の理解が得られないなど(特に、年収面でしょうか。未経験での転職である以上、少なくとも最初の1~2年は現職より給与が低くなるのは避けられないですからね)。この場合、諦めるか気長に異動を待つか、どちらかくらいしか道がない。

「せっかく頑張って資格を取ったのだから知財業界に行かないともったいない」と言う人も多いですが、「これまで築いてきたものをリセットするほうがもったいない」ケースもあると思います。年齢が上がれば上がるほど将来の選択肢は限られていくから、一定の年齢を超えているのであれば、現実を優先させたほうが自身のためと思うのです。
少なくとも、資格を取得したことで、「頑張れる力がある」、「それなりの潜在能力がある」という社内の評価は得られると思います。そこから別の道が開けてくるかもしれません。

なお、独立だけは薦めません。未経験では明細書作成はとてもムリそうですよね。仮にシロウトが見よう見真似で書いたとして、後からリカバーできない不備が見つかって、クライアントから損害賠償請求されたらどうします?
独立は社長になるようなもの。実務の知識はもちろんのこと、一般的なコミュニケーション技術(顧客を獲得する営業力、信用を維持できる人間性、嫌われずに目的を遂げる折衝力など)と、度胸が不可欠と思います。これらを兼ね備えている人は一部だと思います。予備校は「独立可能」を宣伝文句にしていますが、安易な考えであり、転職よりも険しい道だと思いますよ。


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実務修習回想録 ④集合研修 [修習研修]

あけましておめでとうございます(前回の更新(12/1)からだいぶ経ってしまいました…)。今月から集合研修が始まりますね(その前に年明け早々に起案提出がありますが…)。
実務修習でいちばん期待度が高い集合研修。知り合い増やしたい、いい女/男とお近づきになりたいっ…の期待(願望?妄想?)が叶うか否かを決めるのは、おもに班分け(と、その後の飲み会)。しかしこの班分け、口述試験のレーンより、当たり外れがでかいです。

★研修の進め方
講師によりますが、私の部屋はこんな感じでした。
・特実・クレーム(3時間):班ごとにディスカッション&発表→講師講評
・特実・出願手続(6時間):午前は講義、午後はディスカッション&発表→講師講評
・特実・中間処理(6時間):午前は講義、午後はディスカッション&発表→講師講評
・意匠・出願手続(3時間):前半は講義、後半はディスカッション&発表→講師講評
・意匠・中間処理(3時間):講義のみ
・商標・出願手続(3時間):前半は講義、後半はディスカッション&発表→講師講評
・商標・中間処理(3時間):班ごとにディスカッション&発表→講師講評

★1日のスケジュール
開始まで
10:00
までに会場に来るべし(15分以内の遅刻なら出席扱い)。まずは受付を済ませる。この受付がどきどきもので、ここで紙封筒をもらってはいけないです。なぜなら、その中身は「あなた、今回の起案は再提出です」の通知。受付後、着席。座席は指定で、入口に座席表が掲示されている。アイウエオ順なので、アの人はいつも前、ワの人はいつも後ろの席になる。1部屋50人弱(ぎゅうぎゅう詰めで狭い)。

10:00
13:10(研修、10分休憩あり)
午前の部開始。経験者と未経験者がだいたい半々くらい。年齢層も20代後半~50代と幅広い。ディスカッション(起案の課題について、班としての意見をまとめる)が盛り上がる班(たいてい若い)と、そうでない班が(5060代オジサン5人+20代1人って班があって、傍から見ていてかわいそうだった)。時間が余ると雑談していたりする。
経験者がいると心強いし勉強になりますが、中途半端な経験者だと居ないほうがよかったりする(変に気取ったクレームを書いてくる)。コミュニケーションが「???」な人が2班に1人くらいの確率で居る。

13:10
14:00(昼休み)
外に食べに行く時間はないので、近くのコンビニ(向かいの霞ヶ関ビルにローソンがある)で買ってくるか、持ち込みの食料を、自席(午前中の席)か知り合いと一緒に食べるケースが多い。フィーリングの合った班なら、一緒に自席で食べたほうが繋がりが強くなっていいと思う(班はどうしても当たりはずれがあるので、合わなければ無理しなくていい)。机の配置のレイアウト変更があるクラスは、昼休みは部屋から追い出されるので、食事場所を探す必要が。他のクラスの知人か、霞ヶ関ビルのリエゾンスクエア(休憩所)頼み。

14:00
17:10(研修、10分休憩あり)
午後の部開始。詳細は午前に同じ。

終了後
飲みにいく人半分、まっすぐ帰る人半分といった感じ。近くにお店は結構あります(しかも高くない)。集団も、研修の延長(同じ班や適当に集まったグループ)と、もともと出来上がっているグループ(ゼミ仲間など)がありました。同じ班の人なら初対面どうしなので気兼ねする必要もさほどないですが、ゼミ仲間グループには入りづらいと思います(内輪ネタ(ゼミの話)とかされても全くわからないし)。
特に、短期合格者(ゼミに入ったことがない合格者)や通信教育利用者などで、かつ事務所勤務でもない場合、そもそも受験仲間自体が少ないため、結果的に合格者の知り合いも少ない傾向が。飲み会とかに参加したいけどきっかけが掴みにくい、話の輪に入りにくい、名刺交換程度で終わってしまうといったことがあると思います。しかし同じように単独の人はどこかにいるので、早めに(できれば祝賀会や懇親会などで)見つけておくことをオススメします。複数人で行動することで、飲み会などで、他のグループや話の輪に入りやすくなります。

実務修習に対して不安になるのは、修習が未知の世界だからだと思います。でも、必要以上に気負う必要はないですよ。試験に合格するほうがハードルは高いはず。一生に一度の経験(おそらく)を楽しんでください。

<過去記事はこちらから>
*第1回「スケジュール」⇒リンク
*第2回「カリキュラム」⇒リンク
*第3回「恐怖の起案」⇒リンク


実務修習回想録 ③恐怖の起案 [修習研修]

今回は起案についてです。e-learningは極端な話、流しっぱなしにしていても単位が取れますが、起案は講師がOKしてくれないかぎり、単位が取れません。そうです、この「起案」がいちばんネックなのです。

★スタートまでにちょっと予習しておこう
実務修習開始(12/10頃)から最初の起案提出までは、約10日間です(起案は郵送なら必着、直接持込も可)。この10日でクレームと明細書の課題を作成します。未経験だと下調べ(実務のお作法:出願書類の書き方、題材となっているテーマの公報など)が必要になります。さらに、仕事をしながらだと、土日とお正月が潰れる。
そこで、起案作成にスムーズに取りかかるために、合格発表(11/10頃)からe-learning開始(12/10頃)までの1ヵ月間、実務書に目を通しておくのも不安と負担軽減によいと思います(といっても、この記事をupしたのは12月頭ですが)。参考書は内容を理解できるに越したことはないですが、理解できなくてもどこにどんな内容が書いてあるか把握しておくだけで、起案作成に伴い調べ物が発生したときに役立ちます。

★起案・作成プロセス
実際の実務に比べれば難易度は低いのでしょうが、未経験者にとっては“未知との遭遇”。最初は、一行書くだけでも、詰まります。関連するe-learningは聴講した方がいいと思いますが、聴講したからといって起案が書けるようになるわけではなかったです。ですので、参考資料が必要になってきます。

もっとも手っ取り早いのは、実際の出願書類や意見書を参照することですが、たいがいの未経験者は手に入る環境にいないのが現状。そこでググります。
書類の体裁は「出願の手続き」(特許庁HPの「法律・条約」「基準・便覧・ガイドライン」より無料ダウンロード可→リンク)に載っています。関連分野の知識(特許公報)はIPDL(特許電子図書館:公報等を検索・閲覧できる)で見つかります(元ネタに当たる場合も)。
でも、肝心の明細書や中間処理(意見書等)で使そうなフレーズなどはネットではあまり転がっていませんでした。書類作成のノウハウでお金を稼ぐ仕事なのですから、使えるフレーズほど無料では手に入らないのかも。たまたま(宣伝目的で)意見書の見本を公開している事務所HPを発見できて、これはお役立ちでした。
なので、0から考えようとせず、公報やe-learningのテキストのフレーズを真似して書く(写す?)のが早道かと。あと「特許明細書の書き方(6版、ISBN978-4806528289)」、「特許出願への拒絶理由への対応(ISBN978-4806527473)」等の本を参照してもいいと思います。

★起案・突破まで
とりあえず期限内に出すことが最優先。
再提出を恐れない。グーグル&IPDL(特許電子図書館:公報等を検索・閲覧できる)を駆使して長時間粘っても、未経験者ではどうしても限界があるからです(建前上、他者との合議はNGとされています)。
最終的に合格できればいい。集合研修時に起案についてグループディスカッションをするので、その時のディスカッションの内容(≒メンバーのOK起案)を参考にさせてもらえば、2回め(再提出1回目)でほぼ通せると思います。
なお、提出した起案の返却はなく、採点の内訳はわかりません。

★再提出
再提出の期限は通知受領から約1週間です(必着)。起案の1ページ目は指定の用紙(表紙、色紙)を添付するよう指示があるのですが、この色が、青(初回)→黄(再提出1回目)→赤(再提出2回目)…と変わっていくそうです。私は黄色までしか見てませんが。
未経験者だからといって怖がる必要はないです。昨年(H22年度)の様子では、経験者(事務所勤務)でも普段やらない分野(特許技術者が意匠・商標で)や、経験分野(商標経験者なのに商標で)でも再提出などの人もいた反面、未経験者ですべて一発クリアの人もいました。私も再提出は1回だけだったので、自分なりのベストを尽くせばほぼいけると思います。

この時期(起案提出の12~1月)、グーグルで検索ボックスに「弁理士」と入力すると、ふつうに「実務修習」「起案」と自動表示されるくらいでした(調べる必要のある人なんて1000人もいないはずなのに)。でも、誰も、起案の参考になりそうなことはブログに書いていないんです。守秘義務がきつーく課されているので。でも、自力でもなんとかなりますよ。

次回(第4回)は「集合研修」についてです。
*第1回「スケジュール」はこちら⇒リンク
*第2回「カリキュラム」はこちら⇒リンク


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